こんにちは、農業資材に関わる仕事を10年以上続けており、施設園芸指導士補の資格を持っているハウスンです。
ビニールハウスに使われているビニールは大きく分けて2種類あります。
それは農ビと農POです。
こんな疑問を持っている農業に関わる農家さんに読んでほしい記事になります。
ビニールハウスに最適なフィルムとは何かを一言で言いたいのですが、実際の結論はビニールハウスの仕様によってそれぞれ違う。
これが答えになります。
そんな答えは望んでないと思いますし、上記を深掘りしていきます。
農ビと農POの主原料と特性
初めに農ビと農POの主原料と特性について記載していきます。
そんなの知ってるし、知る必要がないという方は目次から次の見出しへ飛んで下さいね!
■農業用ポリ塩化ビニルフィルム
主原料:PVC、可塑剤、その他
特徴:保温性、防滴性、防霧性
■農業用ポリオレフィンフィルム
1.農ポリ
主原料:ポリエチレン(PE)
特徴:耐久性、透明性(製法による)、防塵性
2.農サクビ
主原料:ポリ酢酸ビニル(EVA)
特徴:防滴性、保温性
3.農PO
主原料:ポリエチレンとポリ酢酸ビニルを多層に成形したもの(3層が主流であるが5層の物も有)
特性:耐久性、保温性、防霧性、防塵性、防滴性、透明性(製法による)
こんな感じになります。
この辺りの説明までは詳しくできないので申し訳ありませんが気になる方はググって(Googleで検索)下さいね。
農ビの性能【メリットとデメリット】
農ビの特徴(性能)を簡単に記載し、その後に農家さんの意見と僕が農家さんから聞いて感じたことをまとめて書いていきます。
一般的なメリット【農ビ】
- 保温性がよい
- 初期の透明性がよい
- 擦れや熱に強い
- 防滴性・防霧性がよい
- 用途別に商品構成が多彩である
- くっつきやすい
一般的なデメリット【農ビ】
- 汚れやすい
- 重量がある(重い)
- 寒さに弱い
- 破れた時に広がりやすい(破けやすい)
- 農POよりも価格が高い
農家さんが感じるメリット2選【農ビ】
僕は農ビの張替え作業もたまにやりますし、張ってから何年も経っているビニールを見る機会や触る機会が多々ある経験と農家さんに聞いた意見をメリットとしてまとめました。
1.伸びる素材なのでパッカーで止めることができる
伸びる素材じゃなかったらパッカーで止めてもすぐに外れてしまいます。
伸びる素材というメリットがある為パイプだけのハウスでも農ビを簡単に使用できます。
amazonでも購入可能なのでリンクを貼っておきます!ポチッと押して確認してみて下さい!
2.スレに強いのでハウス用のバンドでしっかり抑えることができる
スレに強いためスレを気にしないでバンドを使用できる。(破れやすいためバンドは必須です)
曲管の間全てにハウス用バンドを使用することで風対策になる。
この2つのメリットのおかげでパイプだけのビニールハウス(ビニペットがない)に農ビを張るのが簡単にできます。
(ビニペットとはスプリング(針金)で止めることができるように作られているハウス資材です。)
伸びる素材じゃなかったらパッカーで止めてもすぐに外れてしまいますし、擦れに弱かったらバンドで抑えたらすぐに穴が空いてしまいますからね。
また、春の水稲育苗にだけビニールハウスを使って田植えが終わったらビニールをはがすというやり方にも農ビは最適です。
春だけ使用するハウスであれば雪対策はほぼ必要ないので最低限の物で作られているビニールハウスが多いですし、そのハウスには農POが使われることが多くなった令和の時代でも農ビが最適と言えます。
パッカーだけで簡単に張れて簡単にはがすことのできる農ビは今後も需要はありますね。
バンドも色々な種類があります。一部をご紹介しておきますね。
農家さんが感じるデメリット2選【農ビ】
農家さんから聞いた農ビを使用していてデメリットに感じることは主に2つあります。
1.すぐ裂けてしまう
少しでも傷がついてそこから風が入り込むと「サー」っとカッターで切ったかのように広範囲にわたって裂けてしまいます。
ビニールの厚さを厚くすれば裂ける確率は下がりますが、一度裂けてしまったら広がり方はあまり変わらずおもいっきり裂けていきます。
びっくりするくらい勢いよく裂けます。
これは安くない農ビを使用している農家さんにとってはとても大きなデメリットですよね。
春だけ使用する水稲育苗の簡易的なハウスには良いのですが野菜を作るようなビニールを年中張りっぱなしのハウスにはこのデメリットはものすごく大きいです。
ビニペットがないハウスであればパッカーやハウス用バンドでおさえることになるので農ビをすすめることが多いですが、その他のハウスであれば僕は農POをすすめています。
張替えの手間を考えれば長持ちする物がいいと思いますからね。
長く持たせたいという需要が一番多い需要なので、要求が耐用年数であれば農ビのデメリットは大きくお勧めできないところです。
もしも破れてしまったらすぐに補修テープで補修しましょう!!
2.重い
農POと比べて重量が約1.4倍あります。
年配の農家さんなど重いものを持つのが大変な方にはこの違いは大きいです。
大きいビニールになればなるほど、その違いは劇的に違いますからなるべく軽い方がいいですよね。
農POの性能【メリットとデメリット】
一般的なメリット【農PO】
- 一般的なメリット【農PO】
- 汚れにくい
- 防滴の持続性がある
- 軽い
- 寒さや風に強い
- 狭い幅から広幅品まで提供されている
- 農ビよりも価格が安い
一般的なデメリット【農PO】
- 硬い
- 伸びにくい
- 初期の透明性が農ビに劣る
- 擦れに弱い
- 熱に弱い
- 硫黄生農薬に弱い
農家さんが感じるメリット3選【農PO】
1.穴が空きずらく、穴が空いても広がりづらい為長持ちする
農POを使用している農家さんにメリットを聞いて一番に返ってくる言葉は長持ちする点です。
こんな風に言われることが多々あります。
穴が空きづらく穴が空いても広がりづらい利点は、年齢を重ねるにつれてビニールの張替え作業が大変になる高齢者にとっては最高の利点です。
張替え作業って意外と大変ですよね。
2.軽い
次にメリットで聞くことが多い答えは軽いという点です。
これも重いビニールかけに困っている人にとっては大きなメリットです。
こう感じる農家さんには農POの軽さはとても魅力的です。
屋根のビニールでは大きさにもよりますが農ビよりも約30%弱軽くなります。
わりとこの差だけで自分で張替え作業ができたりするものです。
3.価格が農ビよりも安い
販売店にもよる可能性はありますが2019年現在は農POは農ビよりも価格が安いです。
重量の違いも影響しているとは思いますが、価格は農ビよりも安く設定されているのは消費者にとってはメリットです。
農家さんが感じるデメリット3選【農PO】
1.「擦れ」に弱い
農POは擦れに弱いのでハウス用のバンドをするとテッペンなどから穴が空きやすいです。
擦れ対策として農PO専用のバンドはあり、それを使うことによって対策になり擦れは軽減されますが、農ビと比べると擦れて破れる確率は高めです。
擦れやすい金具や農PO専用のバンドを使用することで擦れづらくできますが、農ビと違って擦れに気をつけないと穴があいてしまうのでその点はデメリットですね。
もしも破れてしまったら、下の画像のような補修テープを使用して補修することで風の侵入を防ぐことができます。
破れていなくても一個はストックとして持っていることをオススメします!
⬇️こちらは耐候剤が配合されており長持ちします!ビニールハウスの天井のような中々補修ができない場所で使用する際にオススメです!
2.伸びにくい
ビニペットがないハウスに農POを使用する場合パッカーで止めると外れる可能性がすごく高くなります。
なぜなら伸びない素材が使われているため、パッカーのように伸びる性質を利用してフィルムを止めるものと相性が悪すぎます。
無理やり止めようとすると白くなって穴が空いたり、フィルムが破れてしまいます。
3.被覆材(ビニール)を剥がした時に穴があく
被覆材の農POを剥がそうとすると、伸びない素材のため無理やり伸ばすと白くなりその場所が弱くなって穴があく確率がめちゃくちゃ高いです。
0.15mmのような厚いものを使用すれば穴があく確率は下がりますが、一度張ったら剥がさないことを前提に作られたフィルムなので再度フォルムを剥がして張り直すことのないハウスに使用しましょう。
まとめ
農ビにも農POにも良いところと悪いとこがあり、パイプハウスの仕様によって適切なフィルムを張ることがおすすめです。
その特徴を活かすことで長期的に使用することができます。
農ビは主に水稲育苗のような春だけに使用するといった一時的な使用目的かパイプだけのハウスに使用する。
農POは年中張りっぱなしのハウスに使用する。
このように農ビと農POの特徴と性質を理解しながら使用しましょう。
一箇所だけ農ビが裂けたら一気に全体に広がり使い物にならなくなった。
擦れに強いから農POを使用したが剥がしたら破けてしまった。
このような問題は農ビ、農POの特徴と性能を理解していれば避けられたり対策を取ることが可能です。
良いところも悪いところも考えて自分のハウスに最適なフィルムを張りましょう。
この記事が農家さんの役に立てば幸いです。
今回は以上になります。